鞄とドーナツの類似性 -Arc'teryx Veilance / NOMIN PACK-

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Arc'teryx Veilance / NOMIN PACK

[かばんは「鞄」と書く]
みんな知ってる。
革で包む。

調べてみると驚愕の事実が判明した。
「鞄」という字は銀座タニザワの創業者が考案したらしい。

鞄という漢字の由来は諸説ありますが、最も有力なのが谷澤商店を創業した初代谷澤禎三氏が、革と包を一文字にした鞄を考案使用したという説です。それまでは胴乱と呼ばれていましたが、明治14年ごろに現在の鞄に定着したといわれています。
-銀座タニザワのHPより-

この漢字を考えたとき、禎三が思い浮かべていた光景はどんな光景だったろう?
かばんの原型を、革の風呂敷のようなものに見ていたのだろうか?

シカや牛、馬など比較的大型の動物の死骸が、オークなどタンニンに富んだ樹皮の浸かる水たまりで偶然革に鞣される。
皮が革となったものを人類が見つけるところから鞄の物語は始まる。

包まれるものは、水であったり、食糧であったりしたのだろう。

いずれにせよ此方から彼方へ運ばれるものは、すべからく荷物だ。
内容は問われない。

鞄の本質はその本体と同等に「運ぶこと」にある。
言い換えるならば、外観と内部空間。

それはドーナツのようなものだ。
穴には何もないし、食べることもできないが、穴があって初めて、それはドーナツと呼ばれる食べ物になる。
非常に哲学的だ。
形而上的にも形而下的にも。
何もないのに存在している。
色、即是、空。

大丈夫。何を言っているのか自分でもさっぱりわからない。

鞄においては、いかに荷物を包めるかに心を砕くべきであり、本当はその内部空間という何もないところにこそ価値を見出すべきであるはずなのに、ドーナツの穴のように虚ろな僕は、外面の良さに心を奪われ、その内部などには全く注意を払わぬまま、ナイロンバッグとは思えない酔狂な値段のリュックを買い求めたのだった。


[さあ、洞のような前置きはこれくらいにして、レビュー]
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Arc'teryx VeilanceのNOMIN PACKである。
このブログを昔から読んでる人は「やれやれ、いつか手を出すとは思っていたよ・・・」と首をふっていることだろう。
ああ、まんまと買ったさ。

素材はナイロン。AC2 plain weave nylon urethane laminateとある。
ラミネートということは片面にウレタンコーディングがなされた平織ナイロン、ということになる。
マットなブラックで、触感は固め。
がさがさと結構音がする。

これ、数年内に劣化する素材じゃないかと不安がよぎる。
まあ、それ自体も追って報告します。

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Watertight™ジッパーはYKKだが、引きやすくはない。むしろ引きづらい。
防水だから仕方がないとは思うが、もう少し引きやすいジッパーもあったのではないか。

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ショルダーストラップはちょっと不思議な感触。

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柔らかいのだが張りがあり、背負いやすい。
しかしいわゆるスターナムベルトがないため、なで肩の場合、若干ずり落ちるような感覚があるかもしれない。
もちろんヒップ(ウェスト)ベルトもない。

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首のところと側面にも持ち手があるため、ブリーフケース的にも使える。
その際、ショルダーストラップを収納したりまとめておける構造はない。

ミニマルさと利便性の一部を引き換えにしているところは正直あると思う。
トレード・オフ。


さあ肝心の内部構造だ。
ドーナツの穴に目を向けようじゃないか。

背負った時のサイズ感はこんな感じ。

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大きくもなく小さくもないがやや大きい。どっちやねん。
公式サイトには26リットルとある。
26リットルというわりにあまり内部空間は広くない。
奥行きがあまりない、というのが正しいかもしれない。
天地の方向にはそれなりのサイズをとってある。

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背中側のコンパートメントはタブレットやラップトップのPC、あるいは書類や書籍などを入れる空間。

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固定しておくためのスナップボタンと細いバンドがついている。

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内側には小さなポケット。伸縮性のある素材。

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外側はこまごましたものが入れて置けるポーチ状の構造を含むコンパートメント。

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一辺が本体に固定されており、裏返すと裏にもジッパーがあるのだが、用途がよくわからない。
ぐいっと引き出して中のものを取り出しやすい状態でもアクセスができる、ということだろうか。

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このポーチ、取り外しが可能だったらよかったのに、と思ったが、おそらくそれすら潔しとしなかったのだろう。

全体としては1泊するための荷物がぎりぎり入るかな、といった容量だ。


[プロダクトが所有者の行動を規定する]
外観も内部空間もミニマルだ。
とっかかりというものがない。
ここまで徹底してフラットに、かつ端正に作られたリュックはさすがに多くない。
デザインをもっとアウトドア寄りに振ったり、ロゴを配したり、造形そのものをもっと主張的なものにしたりと、人の目を引く何かしらの自意識が、いかなるプロダクトにおいてもその外観に滲むものだが、これは目立たないよう目立たないよう注意が払われているんじゃないかとさえ思われ、それがかえって存在感を放っている。
その在り方はドーナツに似てい(以下略

ミニマルさはいわば鋭い片刃の剣だ。
ある人には心臓に達するほどの致命傷を与えるが、そうでないひとには傷ひとつつけられないだろう。
好きな人は熱狂的に好み、嫌いな人間にとっては意味すら理解し難い。
しかし、何かに特化するということはそういうことだ。
万人に好かれようとすれば誰からも振り向かれない。

そしてこのミニマルさは持つものに対し、ライフスタイルの簡素化を要求し、鋭化を強制する。

なあ、お前はいつもいろんなものを詰め込もうとしてるけど、それって本当に必要なのか?
本当に必要なものを選び抜き、それだけを背負ってシンプルに生きていくべきだと思わないか?

そんな声なき声がこのバッグから聞こえてきた時、あなたも穴こそがドーナツだと考え始めていることに気付くかもしれない。
それが喜ばしいことなのか、病院へ行った方がよい憂うべき事態なのかはなかなか難しいところだが。


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このトートもほしい・・・。




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MIONの丈長いの出てるー!

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