Horseman Joe Leathers訪問

DSC07592.jpg
橋本ステッチャー=Horseman Joe Leathers

[世の中には面白い人がいる]
昨年9月半ば、私用で福岡に行きました。

初日は13時の飛行機で博多へ向かい、翌日は11時の便で仙台に帰ってきたので滞在時間は正味1日。

余裕がなかったのですが、どうしても行きたいお店がありました。


そのお店のホームページに記載されている住所に千代県庁口駅で降りて向かいましたが、それらしき店舗が全く見当たりません。

んー、休み??

今回を逃したら次はいつの機会になるのか予想もつきません。
とりあえず電話をしてみたところ、オーナーの大峰さんという方が電話に出てくれましたが、実は事前の予約が必要とのこと。

ですが、お会いしてくださるということで、場所を教えてもらい、お店に行きました。
というか実はもうほぼ目の前にいて、一度通り過ぎてました。

僕が行きたかったお店はHorseman Joe Leathers ホースマンジョーレザー(以下HJL)でした。
わからないはずです。
どこにもHorseman Joe Leathersなんて書いてないんです。
それどころか靴屋さんであることも正直分からない佇まい。
看板は前に開業していた方の店名「橋本ステッチャー」がそのままになってます。
*外観の写真を撮り忘れました

そしてお店を開けていただきました。
営業(と言ったらいいのか)は終わっておりシャッターを閉じていたそうで。


[きっかけ]
そもそもは、Workersの舘野さんがここの靴を履いていて、つま先がぐっとあがったポストマンがかっこよくて、それを見てみたかった。
博多に来る機会なんてそうそうあるもんじゃないし。

そしてオーナー(という言い方が正しいかはわかりませんが、ここのブーツを作っているひと)である大峰純さんと長いことお話をしました。

ものすごく面白く、まじめで、歩んでいるその道が正しく、そしてその正しさに確信を持って生きている方という印象を受けました。

Tシャツ、チノパン、Vansのスニーカーというそこら辺にいる優しい兄ちゃんみたいな大峰さんですが、話を聞くとけっこう正統な(って言っていいのかわからないけど)経歴。

で、実際に靴を見せてもらったり履いたりしたわけですが、結論から言えばポストマンシューズをオーダー。

独特の色気のある靴です。
大峰さんも言ってましたが、短靴なのにブーツみたいな雰囲気がある。
それは単にブーツを作ってシャフトをぶった切って短靴にしたとか、そういうものではない感じがしました。


[HJLの仕組み]
ここHJLのブーツはハンドソーンウェルテッドです。
靴が好きな方なら聞いただけで、嬉しくなる単語。

実際に足を計測してもらい、HJLの基本となる木型(がいくつかあるのですが)に肉を盛る形でセミオーダーのようにして作ってもらいます。

ハンドソーンですが、総手縫いというわけではなく機械も使っています。
ただ、その機械の使い方がちょっと普通じゃない。

機械を使うことの意味はほとんどの場合「量産のため」ですが、大峰さんの考え方はちょっと違うそうです。
総手縫いだった時代から機械を使って靴を量産する時代への移行期というものがあって、その移行期には「手では出来なかった難しい工程を機械にさせることで、総手縫いよりも良い靴を作ることが出来ていた」んだそうです。
その移行期を過ぎるとまさしく量産のために機械を駆使する時代に突入していくことになるわけですが。


大峰さんが店内に揃えている機械の多くはその時代のものです。
量産のためではなく、良い靴をつくるために使われていた機械を集めています。
もちろんセッティング次第では精密さと引き換えに量産性を高めた使用法もできるとのことですが、あえて効率性を落とし、その機械が最大限の力を発揮できるようにして靴を作っています。

もうこの話を聞いただけで目から鱗。


そして手でやるべきだと大峰さんが判断した個所は当然手縫いが行われています。


機械のすごさと手縫いの良さ。
機械が入る必然性と手縫いの残る理由。

すべては良い靴をつくるために。

例を挙げてくださったんですが、お店の一番左手奥には2台の大きな黄色い機械があります。

イタリアのcerimというつり込み機で、通常は一台で左右のつり込みをします。
つまり左と右という非対称のものを作るために、左と右の公約数的なセッティングをしてつり込みを行っているんだそうです。

でも大峰さんはそれに納得がいかなかったらしく、その機械をなんと2台を並べ、左と右とそれぞれ専用にセッティングをして仮つり込みをし、最後は手でつり込んで仕上げてるんだそうです。

つーかそもそもかなり貴重な機械で、2台あるのも珍しいらしい。

そして古いものだから当然マニュアルなんかなくて、大峰さん自身で試行錯誤してマニュアルを作りながら(!!!!)使っていると。

なんだそりゃ・・・・。

そんなものつくりするひと、今まで聞いたこともない。

パーツなんかも替えのものがあるわけもありません。

どうしてんですか?って聞いたら、地元の金属加工屋さんにつくってもらうんだそうです。

すごすぎるわ。

DSC07593.jpg

この画像の木の箱には、ウェルトやアウトソールのステッチに使う麻糸(ラミー)にしみこませるための菜種油と松脂がブレンドされた液体が入ってます。
この液体をラミー糸の芯まで浸透させたものでステッチングをすると、ステッチ穴の隙間をこの液体が埋めてくれるため、部分的にステッチが擦り切れてもそこからほどけていかないという効果があるんだそうです。
気温や湿度で配合も変えないといけないみたい。

もう見てるだけでわくわく。
プチ大人の社会科見学。

DSC07594.jpg

入ってすぐ左手。

DSC07595.jpg

計測してもらった足型。
ずっと左足が大きいと思っていたら、ほとんど左右に差がない非常に珍しい足なんだそうです。
じゃあ、今まで片方の足だけ靴擦れしたりしてたのはなんだったんだろうと尋ねたら、作る側もきっちり左右対称には作れないことと歩き方の問題とのことでした。

DSC07596.jpg
サンプルのブーツ

DSC07597.jpg
アウトソールステッチャー
DSC07598.jpg
噂のつり込み機

DSC07599.jpg
今からウェルトをつけるところ
DSC07601.jpg
夕方になって灯りがともった店内

すごく面白い体験でした。

夜は大峰さんに教えてもらったラーメン屋さん。
おいしかった。

で、先日、その頼んでいたポストマンが届いたのですが、それはまた後日、詳細レヴューを。
関連記事
[ 2014/05/26 00:00 ] 靴についての雑記 | TB(0) | CM(2)

すごく職人さんらしい職人さんに出会いましたね。
私も、古くからある物の職人をしているのでつくづく感じるのですが。
特に古典技法を使う仕事をしていると、近代発明された機械や素材、技法を使うのに躊躇いがあるんですよね。クラシックではない、正統ではない、と。
しかし仕事を続け、先人の残した品を見て勉強していくと。ふと気づくんですよね。

上手い職人て、盲信的に今までの技法にこだわるのではなく。自分の目指す物作りにより良い結果をもたらす新しい技術ならば、それまでの技法の意味を吟味しその上で躊躇なく新しいものも取り入れているんですよね。柔軟なんですよ。

ただそのさじ加減が難しいというか、しっかりと古典技法と新技法の意味を吟味しないと。ただ楽をしたり、稼ぐため、量産目的だけに新しい技術を使い。かえって物のクオリティを落としてしまうんですよね。
残念ながら現代日本の手工芸品はそのような効率優先の物作りになりきってしまっている物が大半を占めていて、それなのに価格に反映されていないのですが。

思いつくままつらつら書いてしまいましたが(汗

現代の靴作りは一部でそこから古典主義に戻っていますね。
この職人さんはまた違った、ほんとうに職人らしいアプローチで物作りをされていてとても興味深いです。
[ 2014/05/27 22:42 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

通りすがりのチワワさん

チワワさんは職人さんだったのですね!

「ほんとうによいものをつくる」ためにクラシックなテクニックを持って「こなければならない」ことって往々にしてあるんだろうと思います。
でもそこにはコストや手間などの障壁があってそれを情熱が上回らなければならないですよね。

僕も職業的には自分を職人の端くれだと思っていますので理解できます。

あとは付加価値のためだけに古典技法を引用するという状況も現代には出回っているように感じるので、そこに必然性があるのかどうか、吟味できるところは吟味してものを選びたいなと思います。
[ 2014/05/29 00:38 ] [ 編集 ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://qwerty1234567890.blog116.fc2.com/tb.php/388-e1461220