ここ2週間ほど、子供と一緒に寝てしまう日々でした。起きていられない。
子育てと色々なことと両立するのは難しくて、でも最優先事項は仕事と家庭(子育て)なわけで、そうなると真っ先に切り捨てるべきは自分のこと、となるのです。
早く子育て一段落しないかな(次男がひとりである程度のことが出来るくらいになる)と思いつつ、今しか子供と関われないよな、とも思うし。
さてさてどうしたもんだか。
[さて、今日は気合いを入れて]
デリバリーされたばかりのWorkersのオックスフォードボタンダウンシャツです。
Workers、当然知っている人は知っているメーカーですが、超メジャーかというと多分そうではない(舘野さん、ごめんなさい)と思うので軽く紹介しつつ、なし崩し的にシャツのレビューへ。
Workersは舘野高史さんが岡山県を拠点にしてやっていらっしゃる洋服メーカー。
生地探し、生地製作、目指す製品を作れる工場探しを含めた企画、パターン、サンプル(のサンプル?)作り、実際の製作に携わる工場との折衝、出来上がった製品の検品、小売店への卸、直接の販売、サイトの運営をすべてお一人でされているという、普段僕らが目にするアパレルメーカーでは少ない形態のメーカーです。
今は直営店のようなものはなくて、各地のセレクトショップでの取り扱いと、公式サイト(
http://www.e-workers.net)での販売になっています。
日本だけでなくアメリカのJ.crewやカナダのInventoryでも扱われています。
扱っている商品はというと、ワークやトラッドのヴィンテージウェアを礎としてその本質を継承しながら「今」のシルエットや進化を織り込んだ服、とでも言えばいいでしょうか?
文字にしてしまうと雑誌なんかでよくある陳腐な謳い文句みたいだけど、その作り込み方がちょっと尋常じゃない。
先に書いた公式サイトを見てもらえばよくわかります。
そのすごさとともに、洋服作りの一端も勉強できます。
洋服好きを自認する人はこれを見たらけっこう刺激を受けるんじゃないかと思う。
おそらくはほとんどのデザイナーさんは何らかの古着や過去のミュージシャン、俳優が着ていた服なんかにインスパイアされてデザインをおこしているんだと思いますが、その手の内をこんな風に明かしているメーカーはWorkers以外にはない。
古い洋服たちへの圧倒的な愛とその服の歴史や製作にまつわる深い(ともすればオタク的な)洞察。
それが一人の人間に内在しているからこそなせる自分の製品に関する詳細な解説。
そしてそれはそのまま製品の質の担保に少しなっていると思う。
もちろん洋服なんて見て触って着てみてなんぼ、ではあるんだけれど。
デザイナーはデザインだけを担当し、パタンナーがそれを製図し、製作担当が工場へ発注するという分業が当たり前の普通のアパレルではこういう製品説明は無理。
もしかしたら今僕があなたが着ている洋服をデザインしたデザイナーは、それがどんなミシンでどんな人にどんな風に縫われたものなのか、全然知らないかもしれない。
それがどうした、そんなことは大した問題じゃない、と誰かは言うかもしれない。
それは非効率性を是としない高度資本主義社会の洗練されたありふれた生産体制なんだよ、と。
効率と偏愛は相容れない概念だ
偏愛を追究すれば、そこには多少の非効率性は必ずつきまとう。
どちらを優先させるかという価値観の問題だ。
Workersには偏愛を犠牲にして得られる効率性は必要なかった。
大手アパレルメーカーは効率をとり、Workersは偏愛をとったというだけのこと。
バランスもいいと思う。
細部は作り込まれているけど、見た目はわりと普通で、サイズ感も中庸(とも言い切れない。後で詳細)。
素材の良さ、作り込みのわりに値段もそこまで高くない。
日常に使いやすい。
今僕の中で激推しのメーカーです。
何か気になるものがあれば一度は着てみて欲しい洋服。
[さてようやくシャツのお話]
マニアックに何かを追究した結果、それが実用に堪えないものだということは往々にしてある。
つまり古着をモチーフにするとそのディティールだけをひたすら盛り込んで、形はいまひとつということになりそうだけど、少なくとも今回買ったシャツに関して言えば全然そんなことありませんでした。
それどころか、当然モードではないけど、だからと言って決して保守的でもない、正直結構攻めてるなあと思うパターンでした。
いきなりですが着たところを。
まず着た時に感じたのは肩がコンパクトなこと。
なのに身幅は窮屈じゃないし、腕の運動量もちゃんと確保されている。
それでいて、すっきり見える。
ラウンドした裾は昔のシャツによくあるディティールで、Thom Browneなんかでも出ているけど、ちょっとかわいい。
いきなり着用画像から入ったのは、細部はもう言うまでもなくよく出来ているから。
それなら大事なのは何より着た感じと思ったからです。
[では詳細を画像でどうぞ]
小さすぎない襟ときれいなロール
かわいいラウンドテールと終わりを三角に始末した前立て、三角のマチ
このLot.20の、個人的にすごく好きな部分です。
クラシカルディティール満載。
途中にボタンのない少し長めの剣ボロ
未洗い時から既にアタリが出ている脇部分の縫製
そのアップ
Workersのサイトでは「ぴりつき」と書いてありました。
すごくいい表現だと思います。
パッカリングとかいうより全然いい。
胸ポケットは樽型
口を表に返すことでワークっぽさを出したそうです。
なるほどこういうディティールの使い方が「〜っぽさ」を生んでいるんだ。
前立てはもちろん表前立て
生地感と対衝撃プラスチックボタン
少し薄めの、と書いてありましたが十分しっかりしたオックスフォード生地です。
日本の兵庫県西脇のもの。
西脇はいわゆる播州織りの産地です。
以前記事にしたtamaki niimeのストールも播州織りです。
この少しがさっとした手触りがたまらなく好きです。
次は薄くないもっとオンスの高いオックスフォードシャツを買いたいと思います。
それの濃いネイビーとか濃いインディゴ染めなんか作ってくれないかなあ。
センターのボックスポリーツと若干ラウンドしたバックヨーク
肩がコンパクトだからか、シャツを着て初めてこのプリーツが機能していることを実感しました。
[おいおいおいIndivisualized shirtsとか着てる場合じゃないんじゃないの!?]
と本気で思いました。
ギットマン、ギャンバートなどにも負けてないんじゃないかと思います。
当然、体に合う合わないはあると思いますが、素晴らしいシャツです。
次回は何度か着て洗った後の表情をお届けします。